1. 先週の市場概況(9月29日~10月3日):波乱の展開から週末にかけて反発
1.1. 総括
先週の日本株式市場は、週初から週後半にかけて大きく様相を変える展開となりました。週前半は、配当権利落ちに伴う需給悪化や、米国の政府機関閉鎖への懸念から下落圧力が強まり、日経平均株価は重要な心理的節目である45,000円を割り込む場面も見られました。しかし、週後半には米国市場で半導体関連株が最高値を更新した流れを引き継ぎ、週末には植田日銀総裁の発言が円安を誘ったことで投資家心理が大きく改善。日経平均は力強く反発し、再び45,000円台を回復して週の取引を終えました。このV字回復は、下値での買い意欲の根強さと、外部環境の好転に対する市場の敏感さを示しており、今週以降の方向性を占う上で重要な土台を築いた一週間であったと言えます。
1.2. 主要な日次動向の分析
先週の市場動向を日次で振り返ると、以下の変動要因が株価を動かしました。
• 9月29日(月):
権利落ちと円高が重石となり、日経平均・TOPIXともに下落。特にTOPIXは、東証プライム市場の87%に相当する銘柄が値下がりしたことで配当落ち分を大きく超える下げ幅を記録し、大幅反落となりました。
• 9月30日(火):
月末要因で強弱感が対立し、指数間で方向性が分かれました。日経平均は売り物に押されて3日続落し、9月17日以来となる45,000円割れで終えた一方、前日に大幅下落したTOPIXは反動から反発しました。
• 10月1日(水):
取引開始前に米国のつなぎ予算案否決が報じられ、政府機関閉鎖の現実味が増したことから売りが先行。日経平均は一時574円安まで下落しました。しかし、午後に入ると買い戻しが優勢となり、下げ渋って引けました。
• 10月2日(木):
米国市場でS&P500やSOX(フィラデルフィア半導体株指数)が過去最高値を更新したことが強力な追い風となり、日経平均は5営業日ぶりに反発。特に半導体関連株が相場を牽引しました。一方で、値下がり銘柄数が多かったことからTOPIXは続落しました。
• 10月3日(金):
米主要株価指数の最高値更新に加え、植田日銀総裁が講演で早期利上げに言及しなかったことが円安を加速させ、決定的な買い材料となりました。さらに午後の記者会見でも同様の姿勢が示されたことが半導体関連株の買い戻しを誘い、日経平均は続伸して週の高値圏で取引を終え、TOPIXも3営業日ぶりに大幅反発しました。
1.3. 先週の市場からの示唆
先週のダイナミックな値動きは、今週以降の市場を展望する上で重要な示唆を与えています。
1. 米国市場との連動性の再確認
週後半の力強い反発は、SOX指数など日経平均との連動性が高いとされる米国株価指数の最高値更新が直接的なきっかけとなりました。これは、日本市場の方向性を判断する上で、引き続き米国市場の動向が最重要であることを改めて示しています。
2. 半導体関連銘柄の市場牽引力
指数寄与度の高い半導体関連銘柄が、週後半の上昇を主導しました。これらの銘柄群の動向が日経平均全体のパフォーマンスに与える影響は極めて大きく、今後のハイテク関連のニュースフローが市場のセンチメントを左右する鍵となります。
3. 金融政策に対する市場の敏感度
植田日銀総裁の発言が早期利上げ観測を後退させた途端、為替市場が円安に反応し、株式市場の買いを誘発しました。これは、市場がいかに日米の金融政策の方向性、特に金利差の動向に神経を尖らせているかを浮き彫りにしています。
先週の終値は、市場が下値の堅さを確認し、再び上値を試すための足場を固めたことを示唆しています。これにより、今週は重要なテクニカルレベルへの挑戦が現実的な視野に入ってきました。
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馬渕磨理子先生の解説
2.本動画の主なポイント
2.1. 米国政府部門閉鎖と市場への影響
- 閉鎖の背景と原因: 米国政府部門の一部閉鎖は、共和党と民主党の間での予算を巡る議会での意見の対立が原因です。
- 日本市場の初期反応: 政府閉鎖のニュースが速報で出た際、日経平均はトータルで500円ほど下落し、東証は続落しました。
- 米国市場の現状: 一方、米国のS&P 500、ダウ、ナスダックは最高値更新中であり、米国側では政府閉鎖を「いつもの風物詩」としてあまり気にしていない可能性があります。過去にも1970年以降、政府閉鎖は計20回発生しています。
- トランプ流のディール(真の狙い): 講演者は、今回の閉鎖をトランプ前大統領の**「ディールの延長線上」**と見ており、行政部門のコストカットを目的とした国内政治への手法の持ち込みであると分析しています。
- これはワシントンの無駄遣いをカットしたいという姿勢で、支持層にアピールする戦略です。
- この戦略のため、一時的な停止ではなく、行政部門の長期的な解雇(コストカット)まで踏み込む可能性があり、その場合、米経済に懸念が出てくるかもしれません。
- 雇用統計と利下げへの影響: 政府部門が運営しているため、雇用統計の発表がされない見込みです。
- 代わりに、民間部門のADP雇用者数が注目されます。10月1日に発表されたADPの数字(3.2万人増)は市場予想(5.1万人増)を下回り、雇用が弱いことが確認されました。
- 景気が悪化し失業者が増えることは、利下げを行う方向性の理由付けになります。
- この結果、10月29日の利下げは99.4%、12月の利下げは89%織り込まれており、年内3回の利下げムードが出ています。この利下げの流れが株式市場にリスクオンムードをもたらし、株高が続いています。
2.2. 日銀の動向と日本市場
- 年内利上げの可能性: 年内(10月または12月)に日銀の利上げがあるかもしれないという雰囲気が醸成されています。
- 自民党総裁選の株価への影響: 週末に自民党の総裁選が終わり、週明けから市場に影響が出る可能性があります。
- 日銀による「地慣らし」: 9月の日銀金融政策決定会合の「主な意見」では、「そろそろ再度の利上げを考えてもいい時期」や「中立金利にもう少し近づけておくべき」といった、利上げスタンスへの回帰を示唆する意見が公表されており、世論や金融機関に対する「地慣らし」が行われている状況です。
- 日銀短観(大企業・製造業): 10月1日発表の短観では、大企業製造業の業況は2期連続で改善し(+14)、強い数字が確認されました。
- ただし、宿泊・飲食や不動産、通信といった非製造業の一部には、インバウンドの好調さとは裏腹に、予想に反して芳しくない数字が見られます。
- これは、儲かっている日本企業が、賃上げや値上げの突き上げを避けるために**「保守的に見通しを出す」**という特徴が影響している可能性が指摘されています。
- 想定為替レートの重要性: 企業が想定するドル円の想定為替レート(2025年9月調査で145.68円)は、現在の水準(147円台)よりも円高を見積もっています。
- もし利上げがなく、為替が現在の円安水準で推移すれば、企業利益は想定より上振れする可能性があります。
- 設備投資の強さ: 企業の設備投資計画は強く、特にソフトウェア投資(大企業全産業 10.7%、中小企業全産業 28.1%)が積極的であり、人件費削減のためのIT化・DXツール導入に意欲があることがうかがえます。