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先週の市場動向(2025年11月10日~14日)
1.1. 週間サマリー:外部要因に揺れた一週間
先週の日本株式市場は、米国の政治・金融政策を巡る期待と失望に振り回され、ボラティリティの高い一週間となりました。週初は、米政府機関の閉鎖回避に向けた協議進展への期待から堅調に推移し、TOPIXは連日で過去最高値を更新するなど強気のムードが広がりました。しかし、週末にかけて米国の利下げ期待が後退したことをきっかけに市場心理は一変。金曜日には日経平均が一時1,000円以上下落する急落に見舞われ、週初の上昇分を帳消しにする展開となりました。この週末の急変は投資家心理を悪化させており、今週の市場の方向性を占う上で、外部環境の動向がより一層重要な意味を持つことを示唆しています。
1.2. 日次動向と主要な変動要因
• 11月10日(月):
前週末の米国市場で、つなぎ予算案可決への期待から主要株価指数が上昇した流れを引き継ぎ、日経平均・TOPIXともに上昇。取引時間中に米上院でのつなぎ予算案合意が伝わったことも買い安心感を誘い、堅調なスタートを切りました。
• 11月11日(火):
米株高を好感し、日経平均は一時600円以上上昇する場面もありましたが、買い一巡後は上値の重い展開に。午後には半導体関連株への戻り売りに押され、日経平均は小幅反落して取引を終えました。
• 11月12日(水):
ソフトバンクグループの下落が日経平均の重しとなる一方、TOPIXは堅調に推移し、10月31日につけた過去最高値を更新。この動きが市場全体を支え、最終的に日経平均も反発し、51,000円台を回復しました。
• 11月13日(木):
NYダウが連日で最高値を更新したことや、為替市場で一時1ドル=155円台まで円安が進行したことが追い風となり、日経平均・TOPIXはともに続伸。TOPIXは連日で過去最高値を更新し、市場の強気ムードを牽引しました。
• 11月14日(金):
米国で利下げ期待が後退したことを嫌気し、NYダウなど主要3指数が揃って大幅安となったことが直撃。日経平均は売り先行で始まり、一時1,035円安と急落しました。週末ということもあり積極的な買いは手控えられ、安値圏で引け、週間の上昇分を失いました。
先週は米国の動向に一喜一憂する展開となり、週末の大幅下落によって楽観的なムードは一掃されました。この急落により、日経平均は中期的なトレンドの生命線である25日移動平均線まで押し戻され、今週のテクニカル的な攻防の舞台が整いました。
関連動画:
馬渕磨理子先生の解説
動画の主なポイント
日本株の決算と経済状況
- 決算の上ぶれ優勢:決算の進行過程において、かなり上ぶれ優勢であり、予想を上回る決算を出す企業が増加しています。
- 企業の底力:円安の恩恵を受けている企業がある一方、関税の影響が思ったよりも少なく、値上げや販売数量増によって利益を稼いでいる企業も見られ、企業の底力が見えてきました。
- トピックスの好調セクター:直近3ヶ月間のトピックスのパフォーマンス上位は、非鉄金属、鉱業、電気機器、石油・石炭、卸売などのセクターです。
- AI需要と素材:非鉄金属(銅、ニッケル、金、銀など)は、日本国内で建設されているデータセンターや、AI投資、半導体の需要に関わる部品の素材として好調です。
- 半導体と電気機器:電気機器セクターもAI投資と半導体需要が大きく、アドバンテストやキーエンス、東京エレクトロンなどが代表銘柄として挙げられます。
- 長期的な上昇トレンド:過去1年間(昨年12月30日から現在まで)でトピックスが最も上昇した銘柄の1位は記憶視(700%の上昇)で、フラッシュメモリーや半導体関連企業です。主要な上昇銘柄には、半導体、非鉄金属、電線銘柄、造船などが含まれており、「国策銘柄」の強さが際立っています。
- 内需の改善:建設業(例:戸田建設)などが増収増益で株価も堅調であり、利益が改善している印象があります。
- 利益成長:SGホールディングス(佐川急便)のように、売上が19.17%、1株の修正利益が77%伸びるなど、業績が改善している企業も見られます。
- プロの予測(2026年EPS):ブルームバーグのプロ向けレポートでは、日本の企業は円安とAI投資によって2026年のEPS(1株当たり利益)がさらに成長すると見込まれており、政府のAI推進加速により4%ほどの上ぶれが予測されています。
- 賃上げと価格転嫁:この3年間、日本は賃上げが進みましたが、企業の利益が押し下げられることはなく、人件費の上昇を価格に転嫁できているという分析があります。マクロで見ると、賃上げが進むよりもCPI(物価)の上昇水準が上回っており、収益が確保できています。
米国の経済状況
- 政府閉鎖の終了:米国の政府部門の一部閉鎖が43日間続き、経済損失は1.7兆円規模になりましたが、ようやく終了しました。
- マーケットの動向:ダウは48,000ドルを突破し、高値を更新しています。
- 利下げ期待:雇用統計やCPI(消費者物価指数)の数値が公表されていないものの、マーケットでは景気悪化を見越して「利下げするだろう」と見られ、株式市場は一旦上昇しています。ただし、パウエル議長は12月の利下げを必ずやるとは限らないと牽制しています。
- 景気の底堅さ:GDPナウの予測では4.0%の成長となっており、消費が持ちこたえているため、米国の経済はまだ底堅いと見られています。
- トランプ氏の政策影響:トランプ氏が打ち出している大規模減税(法人・所得)や、関税による税収を国民に分配する(給付)方針は、国民の手元にお金が入り、消費を下支えする可能性が高いと見られています。
為替と金融政策
- 円安水準:為替は155円をつけており、円安が進行しています。これは高市新政権による積極財政への期待など、様々なロジックが背景にある可能性があります。
- 為替介入の可能性:155円は、過去(2022年9月~10月や2024年4月~7月)に為替介入が実施された水準に近づいており、いつ介入的なことが行われてもおかしくない水準です。
- 米国の意見:米国の財務長官目線では、日本がやるべきは為替介入よりも利上げを先にすべきであるという意見が出ています。為替介入は数日で効果が消化され、円安に戻る傾向があるため、利上げが根本的な是正になると考えられています。
- 介入の段階:現在の過度な円安に対しては、まず要人発言による「口先介入」のフェーズにあるとされています。金融政策の手段として、口先介入、実際の為替介入、利上げの3つがあります。
企業価値向上と自社株買い
- 自社株買いと償却の重要性:ブルームバーグのレポートでは、自社株買いを実施し、さらにその株を償却(消却)した会社が評価される傾向が示されています。
- 償却のメリット:自社株買いだけでもマーケットは喜びますが、償却(株を無くすこと)を行うことで、その株が市場に再び出回らないことが確実となり、1株あたりの株価の価値が高まったままで維持されるため、特に評価されます。
- EPSへの影響:自社株買いと償却を行った会社は、本業の成長に加えて自社株買いによってEPS(1株当たり利益)の評価が押し上げられる(下駄を履く)ことになります。
- 金融市場の視点:金融市場の考え方では、上場している企業は、溜まっている資金を株主に還元し、1株当たり利益を向上させることで資本市場に評価されるべきであると見なされます。
- ガバナンスの課題:本来、企業は新規事業やM&A、従業員への支払いなどの成長投資を優先すべきですが、日本企業はガバナンスが弱く、資金を眠らせているため、株主還元(自社株買いや配当)が求められています。